ナマコのもつ強力な殺菌力を持つ抗真菌成分「ホロトキシン」
海洋生物であるナマコには、抗真菌作用を持つ物質「ホロトキシン」が含まれています。
当社の創始者である島田恵年氏が、ナマコから真菌に対して高い抗菌力のある新規物質を発見し、「ホロトキシン(英名:Holotoxin)」と命名しました。
1964年12月に、日本でホロトキシンの製造方法の特許を取得し、その後アメリカ、イギリス、ドイツでも特許申請した結果、日本を含む世界4カ国で特許を取得しました。
また、1969年にアメリカの科学雑誌「SCIENCE(サイエンス)」にホロトキシンが白癬菌やカンジダなどの真菌類に対して高い抗菌作用を有するという論文を発表し掲載されました。
抗菌力試験
当社製品に使われているステイコプスエキス(ナマコエキス)は、ナマコを凝縮した天然エキスで、多くホロトキシンを含有しています。
そのナマコエキスを使って水虫菌(白癬菌)の抗菌力試験を行いました。
白癬菌を混合したシャーレにナマコエキスなしのろ紙(左)とナマコエキスを染み込ましたろ紙(右)をそれぞれ中央に置き、27℃で3日間培養しました。
ナマコエキスなしのろ紙(左)に対してナマコエキスを染み込ましたろ紙(右)には阻止円ができており、白癬菌の増殖を阻止し高い抗菌力がある事がわかります。
ホロトキシンについては、様々な書籍や論文にも掲載されています。
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ホロトキシンの構造
島田氏は1969年に科学雑誌「SCIENCE(サイエンス)」に発表した論文中に、乾燥させたナマコから体壁をけずり取り、それを各種の有機溶媒により分画抽出を行い、結晶性のホロトキシンを得たことを報告しています。
同時に、その物質をサポニンであると推定しています。
この論文の報告は、世界の研究者の興味を呼び、当時のアメリカやソビエト連邦の天然物関係の科学者の中にはホロトキシンの化学構造を究明しようと研究を始めた者もいました。
わが国日本でも、大阪大学薬学部教授(当時)の北川勲先生を中心とした天然物化学研究グループがホロトキシンの構造に興味をもち、化学構造を明らかにする研究を始めました。
その結果、北川先生ら研究グループは、ホロトキシンと考えられた物質は、ホロトキシンA、ホロトキシンB、およびホロトキシンCの混合物であることを発表し、世界に先駆けてホロトキシンA、ホロトキシンBの化学構造を決定しました。
ナマコの体壁の抽出によってホロトキシンが得られますが、さらにこのホロトキシンを化学的に分析するとホロトキシンAが大部分を占め、次いでBが多いことがわかりました。
Cは非常に僅かにこの中に含まれているに過ぎません。
大阪大学では、これらのA、BおよびCをそれぞれ分離し、構造を追求し、ホロトキシンAもホロトキシンBも専門的には、トリテルペノイドサポニンの一つであると判明しました。
ホロトキシンAおよびホロトキシンBの化学構造を示せば次のようになります。(図を参照)
これは非常に難かしい構造のようにみえますが、植物の中には、作用は異なりますが同類のサポニンを含んでいるものが多くあります。
たとえば甘草中のグリチルレチン、 あるいは朝鮮人参の有効成分であるジンセノサイドなどはその代表的なものです。
簡単に構造を言うとホロトキシンAはトリテルペノイドにキシロース二個、キノボース一個、グルコース一個、メチルグルコース一個が結合したもの、ホロトキシンBはこのAにもう一つグルコースがはいったものといえます。
トリテルペノイドサポニンの植物界での分布は比較的広く知られていますが、動物界での分布はあまり知られていないようです。
今まではナマコとヒトデ類に含まれていることはわかっていました。
しかしこれらは抗真菌作用がある成分ではありません。
ナマコの中から発見されたホロトキシンが抗真菌作用を有する配糖体の最初ではないかと思われます。
また、北川先生ら研究グループは、これらホロトキシンの白癬菌などに対する最小有効濃度を比較しています。
これによりますと、ホロトキシンAとホロトキシンBはその値が大体同じ程度です。