水虫に対して強力な殺菌力をもつ成分「ホロトキシン」

天然ナマコ成分「ホロトキシン」って?

なまこの酢のもの、あるいはなまこの腸のこのわたにみられるように、 日本では古くからさけのさかなとして、なまこが食用に供されてきました。
中国でも、イリコという名で、なまこを干したものが漢方薬として、重要な役割を演じてきました。
しかし、そのなまこが水虫に効くということは恐らく誰もが知らなかったことでしよう。
正確にいえば、なまこの中に含まれて抗かび作用をもつある成分が水虫に画期的に効くということです。
この成分をホロトキシンの発見者である島田恵年氏が抽出し、それをホロトキシンと名づけました。
水虫薬「ホロスリン」はその天然ナマコの成分であるホロトキシンを有効成分としております。

ホロトキシンの構造

島田氏は、なまこからホロトキシンを取得し、それが白癬菌やカンジダなどの真菌類に対して高い抗菌作用をもっていることを発見するや、 ただちに世界的に権威のある科学雑説「サイエンス」(一九六九年)に発表。この中で、 彼は乾燥したなまこから体壁をけずり取り、それを材料に各種の有機溶媒により分画抽出を行い、 結晶性のホロトキシンを得たことを報告しています。同時に彼はそこで、 その物質をステロイド核をもったグリコシッド(配糖体)であるといっています。
このサイエンスにおける彼の報告は、世界の研究者の興味を呼びました。
そしてアメリカやソ連の天然物関係の科学者の中にはホロトキシンの化学構造を究明しようと研究を始めた者もいました。
わが国でも、大阪大学薬学部の北川先生を中心とした天然物化学研究グループがホロトキシンの構造に興味をもち、研究を始めました。
その研究の結果、最近、北川先生らは、ホロトキシンと考えられた物質は、 ホロトキシンA,およびCの混合物であることを発表しました。
なまこの体壁の抽出によってホロトキシンが得られますが、 さらにこのホロトキシンを化学的に分析しますとホロトキシンAが大部分を占め、 次いでBが多いことがわかりました。
Cは非常に僅かにこの中に含まれているに過ぎません。
大阪大学では、これらのA,BおよびCをそれぞれ分離し、構造を追求しています。
そして今までにAとBの構造が決定されましたホロトキシンAもBも専門的には、ステロイド系のサポニン中の一つであるといえます。
ホロトキシンAおよびBの化学構造を示せば次のようです。
これは非常に難かしい構造のようにみえますが、植物の中には、作用は異なりますが、 同類のサポニンを含んでいるものが多くあります。
たとえばジギタリス葉の中の強心配糖体として知られているジゴニン、ジトニン、ジギトニン、甘草中のグリチルレチン、 あるいは朝鮮人参の有効成分であるジンセノサイドなどはその代表的なものです。
一口で構造をいえばホロトキシンAはステロイド核にキシロース二個、キノボース一個、グルコース一個、メチルグルコース一個が結合したもの、 ホロトキシンBはこのAにもう一つグルコースがはいったものといえます。
ステロイド系の植物界での分布は比較的広く知られていますが、 動物界での分布はあまり知られていないようです。
今まではなまことヒトデ類に含まれていることはわかっていました。
しかしこれらは抗かび作用がある成分ではありません。
なまこの中から発見されたホロトキシンが抗かび作用を有する配糖体の最初ではないかと思われます。
島田氏は、天然界から抗かび作用のある化学物質を選び出し、それが水虫に画期的な効果をもつことを発見しました。
そして彼なりにその構造を究明し、サポニン系統のものであろうと考萎しました。
一人の科学者が十年有余の歳月を費やしてここまでやりとげました。
その後に大学の研究者が最新の科学的知識と技術を使って化学構造を決定しました。
これによって将来、ホロトキシンが化学的に合成し得る可能性が出たわけです。
ただこの構造から考えると、ホロトキシンの合成はむしろ経済的に難しいと思われますが。
また、北川先生らは、これらホロトキシンの白癬菌などに対する最小有効濃度を比較しています。
これによりますと、ホロトキシンAとBはその値が大体同じ程度です。
彼がホロトキシンを発見してから、北川先生がその化学構造を決定するまでにも、かなりの年数が費されています。
彼は、北川先生がホロトキシンの構造研究を行うに際して自分のつくったホロトキシンのサンプルを提供しました。
彼はこれについて、自分の発見したホロトキシンが優れた研究者によって研究され、 解明されたことを喜び、同時にまた先生に対して感謝の念で一杯であると語っていました。

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