水虫の治療について

<はじめに>

水虫は、白癬菌という真菌(いわゆるカビ)が足などに繁殖することで発症する皮膚真菌症のひとつです。白癬菌はケラチンという成分を栄養とするため、表皮の角質や爪など、ケラチンの豊富な組織で繁殖します。代表的なものとしては足白癬と爪白癬があります。

足白癬の罹患率は日本の人口の約20%にものぼり、爪白癬はその半数である10%が罹患していると推計されています。特に高齢者で頻度が高く、40歳代から加齢と共に罹患率が上昇します。性別としては男性の方が多い(約1.5倍)ものの、最近では女性にも増えつつあることが知られています。

白癬の治療は、抗真菌薬を塗ることと、内服することが主体です。足白癬は比較的治りやすいものの、爪白癬になると途端に治療が困難です。一般的な外用薬を塗っても、爪には血流が無いため効果が薄い場合が多く、通常、内服薬を使用することが必要になります。

治療の必要性

白癬症がひどくなると、日常生活においていろいろな困難が出てきます。
手指の場合には、触覚などの知覚が低下したり、足趾爪の場合でも高度になると陥入爪や、爪甲肥厚、鉤彎症による疼痛などを認め、起立や運動に支障を生じたり、靴が入らなくなったり、靴下が引っ掛かってやぶれるなどの多種多様な生活上の問題が生じます。また、糖尿病患者では免疫力が低下しており、白癬症が重症化しやすいため、特に早期診断・早期介入が必要です。

白癬症の治療法

〇 内服療法

日本でよく用いられている内服薬としては、グリセオフルビン、イトラコナゾール、テルビナフィンの3種類があります。特に爪白癬に対しては、外用薬だけでは対処できないことも多く、内服薬が用いられることが多くなります。

・グリセオフルビン
1960年代から使用されています。安くて比較的安全であり、小児にも使用できるという特徴がありますが、効果が不十分なこともあり、再発率も高いことから現在使用されなくなりました。

・イトラコナゾール
角質に親和性が高く、内服をやめても皮膚に4週間、爪に6-9か月とどまるため、高い効果が期待できます。ただし、薬の飲み合わせが悪いことがしばしばあり、投与が憚られることがあります。

・テルビナフィン
角質に親和性が高く、内服をやめても皮膚に2-3週間、爪に2か月くらいとどまるため、高い効果が期待できます。イトラコナゾールと比べてコストが安く、飲み合わせなどの面で問題となることが少ないという利点がある反面、5-6か月もの間、飲み続けなければならないという煩わしさがあります。稀に肝臓に負担がかかることもあるので、必要に応じて採血検査を受ける必要があります。

これらの中で現在使用されるのは、イトラコナゾールかテルビナフィンです。これらはどちらも一長一短ですが、臨床試験のデータからすれば治癒率の面ではテルビナフィンの方がやや秀でているという結果が優勢です。実際の臨床においては、使いやすさなども含めて、治療薬を選択することになります。

〇 外用療法

外用薬としてはさまざまな種類の薬がありますが、代表的なものとしては

  • 塩酸テルビナフィン(ラミシール)
  • ラノコナゾール(アスタット)
  • ケトコナゾール(ニゾラール)
  • 硝酸イソコナゾール(アデスタン)
  • 硝酸ミコナゾール(フロリード)
  • クロトリマゾール(エンペシド)
  • ビホナゾール(マイコスポール)

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など数多くのものがあり、またそれぞれにクリーム、軟膏、液というようにいろいろな剤形があります。(軟膏はべたべたしますが、荒れたところにも使用できます。反対に、クリームは使用感がいいのですが、刺激が強いため皮膚が傷んでいるところには使えない、といった形で使い分けます)

足の裏は厚い皮膚で覆われています。お風呂上がりなどは、足の裏が軟らかく湿っているので、白癬菌がいる角質層まで薬が浸透しやすく高い効果が期待できます。患部だけでなく広い範囲に白癬菌が付いているので外用薬は広めに塗るようにしましょう。(足の指の間に症状があるときは、足と指と足の裏の前半分に塗る、など)

治療が難しい爪白癬に対して、海外では、ciclopiroxやamorolfineなどを含有したnail lacquerと呼ばれる治療などもあります。また、高濃度の尿素含有軟膏と併用することで爪に浸透しやすくしたり、iontophoresisを併用したりすることもあります。

〇 局所療法

爪白癬に対しては、たとえば抜爪したり、デブリドマンといって病変部を除去したりする治療が行われることもあります。多くは、内服療法や外用療法と併用して行われます。

〇 自然由来の水虫治療薬、ホロスリン

1969年に、SCIENCEという歴史ある科学雑誌に、なまこからホロトキシンという物質が抽出できたという結果が報告され、さらにこのホロトキシンが白癬菌に対して高い抗菌作用を有するということが分かりました。歴史ある成分ですが、現在でもホロトキシンに関する文献は毎年出ており、このホロトキシンを使った白癬症治療薬としては、ホロスリンという薬が市販されています。

なまこ由来の成分であり、化学的に合成された化学物質でないことから比較的副作用も少なく、安全に使用することができます。大規模臨床試験のデータは無いものの、市販薬のひとつとしては有望な治療選択肢のひとつであると言えるでしょう。

生活の上での白癬症予防

そもそも白癬症にならないようにすることが大切ですが、予防という観点と治療中において、どのようなことに気を付ければよいでしょうか。

  1. まず毎日足を洗うことです。白癬菌が角質層に入るまで24時間以上かかるといわれています。毎日しっかりと足を洗い、清潔に保つことは大切です。
  2. 足を乾燥させることも大切です。白癬菌はカビの一種ですので、湿度が高い環境を好みます。特に指の間をなるべく乾燥させることが肝要です。
  3. 湿度を下げるという意味合いで、通気性の高い靴を選びましょう。
  4. 5本指ソックスを履くようにしましょう。汗をよくかく人は日中に1度靴下を履き替えるのも効果的です。
  5. バスマットをこまめにかえるようにしましょう。家族にうつさないためには、共用にしないことも大切です。
  6. こまめに掃除をすることも大切です。床やカーペットや水回りなどはこまめに掃除機をかけるように心がけましょう。
<まとめ>

白癬症は一度発症すると完治するまでに時間がかかる疾患ですので、まず予防が第一です。乾燥と、清潔を保つことが白癬症を防ぐことができます。すでに発症している場合には、適切な薬を使用し、根気強く治療を行いましょう。

また、「自分は水虫(白癬症)だ」と考えている方の何割かは、実はきちんと診断すると白癬症ではない場合もあります。市販薬を試してみて、ホロスリンを試してみても、なかなか治らないような場合には、お近くの皮膚科へ受診し、きちんと診断してもらうことも大切です。

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